※からあげ

 

 

彼らはガラス越しに

鈍色の空を見上げる。

 

「外の世界は楽しそうね。」

「そうか?

食われるだけだぞ?」

「それでも、

誰かの食欲を満たすんだ。

人間の一番の欲を

満たしてやる。

楽しくない?」

 

彼らは、茶色の服に身を包み、

外を歩く人間に目を向ける。

すると、一人の人間が

近づいてきた。

 

「お前ってさ、

面白いもの見たことある?」

「面白いって?」

「いや、面白いものや

すごいものを見れずに

人に食べられるんて、

嬉しいか?」

「なによ、突然。

あなたは人間になりたいの?」

「…いや、からあげでいいや。

人間見みたく欲まみれの

人生は送りたくないね。」

 

その瞬間、

彼らは袋に詰め込まれた。

 

彼らは、人間の食欲を

満たすために

外の世界に駆り出される。

 

その時の空は青かった。

 

 

 

 

「だーかーらぁ、

唐揚げは二度揚げをしないと

いけないんだってば!!」

 

と、彼女がむきぃいと

怒っている。

しまったなぁと

思いつつも

僕は心の中で微笑んだ。

 

今日は7月6日は

彼女の誕生日。

だからこそ僕はこうして

夜ご飯を作ったわけだけれど、

こうなるとはね。

 

「ほらほら、こうして

こう揚げて……、

ほいさ、完成。

運んだ運んだ」

 

むふっと膨れっ面で

彼女はお皿をつきだした。

はぁいと僕は返事をして

居間へ運ぶ。

 

「全く、本当に

世話のかかるような

人なんだから」

 

頑張ったんだから許してよ。

僕が唐揚げを作ると

決まって鈍色の空を思いだし

手が止まっちゃうんだから。

だけれどまだ

彼女は怒っている。

僕が二ヶ月も

出張していたのも

相まっているんだろうなぁ。

その後に暫く流れた

沈黙に耐えかねて、

許してくれないかい?と

声を掛けると

 

「やだ」

 

と短く返事が帰ってきて

その後にも

 

「あともう一回だけ

仕事を休まないと

許さないんだから」

 

とも帰ってきた。

 

二度揚げかな?

と僕が言うと、

二度揚げよ。

と彼女は言った。

 

君も中々

世話のかかる人だなぁ。

 

頭でスケジュールを

整えつつも、

了解しましたと答えれば

上出来、上出来。と

彼女が微笑んだ。

 

明日もまた、

唐揚げを作ろうかな。

 

その時の空は黒一色で、

ただぽっかりと

満月が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

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二つと二人の

からあげの話です。

 

なんとアグネアさんとの

共同製作の小説です!

アグネアさん、ありがとう!

 

※を挟んで上はアグネアさん。

下は藍色が書いたものと

なっています。

それぞれ違う雰囲気と

文体をお楽しみください!