※インクリメント

 

 

ちょっと今から些細な話を

しないといけない。

 

目を覚ましたら夕焼けで、

一日半も寝ていたって事に

酷く泣きたくなったんだ。

いや、だってさ、平日だよ?

大学あるんだよ?

あり得ないってこれ。

 

取り敢えず、

赤色の日の光を浴びながら

出席点だけは取るために

外をでたんだ。

 

町はいつも通りで、

車も人も誰も彼も

ちゃきちゃき動いてる。

乱れるな乱れるなと

歯車みたいだ。

 

通り過ぎるお姉さん方は

新しいトレンドドラマの

噂の検察官の事

話している真っ最中。

それは良いけれど道を開けて?

 

逆にお兄さん方は

仮想現実に浸ってる。

もう夕焼け小焼けだぞ、

目を冷ませって!

 

まぁそんな通りを抜け出して

電車を乗り継ぎ30分。

空の夕やけ電気が

切れそうな時に

やっと大学に着いた。

帰る人混みに紛れてさ、

一生懸命講座へ向かった。

 

嬉しいことに、

講座はまだやっていて、

テクノ不安症について

解説をしていた。

なんとなく分かるような

話っていうのが

とても恐ろしい。

あぁあ、自分もならないように

気を付けないとね。

 

いくつかの講座を終えて

廊下を歩いて

帰ることだけを考えて。

ふと周りを見てみれば、

皆が酷く青ざめた顔で

こちらを見ていた。

なんでそんな顔をするのさ?

まるで幽霊に

会ったみたいだよ?

 

「なんでいるんだ、

お前がここに!

あぁ分かったぞ、

気付いていないんだな。

自分が倒れたって、

気付いていないんだな。」

 

……どういう事?

 

「お前、突き飛ばされたんだ。

階段から。親友に。突然過ぎて

気付いていないんだな。

だから、だからこそ

お前がここにいるんだ。

病院じゃなくて、大学に」

 

えっ、つまり、

それってさ、

インクリメント?

1つ増やされてるの?

インクリメント?

いやそれは、

あの、つまり?

 

「いいから今すぐ帰れよ、

お前はここにいるなって

いけよ、早く早く、

目を覚ます前に早くな!

いつも通り電車でさ。病院に。

お前本当にやばいんだからさ」

 

……そういう事?

 

「もう早く行けってんだ!

自分が大変だって、

分かっていないんだな。

あぁいつもそう、

お前は馬鹿だ!

早く気付けってば!」

 

一生、忘れないぞ?

その言葉を。

だけど事態は把握できたよ!

さっさと帰ろうか。

皆の酷く青ざめた顔を

ほんの少し眺めてから、

走ることだけを考えて。

踵を返して

廊下をただ走っていく。

 

まだ忘れていない。

帰り道、自分がいる場所の事。

忘れたら終わり。

辛くて怖いよ、

でも嘘みたいに楽しい、

面白いだなんて。

テクノ依存症だった、

あの日々のせいかなぁと

何故か思った。

 

一生懸命通りに向かって、

排気ガスに紛れてつつ

やっとあの駅に着き、

地下鉄に載って

白い朝やけ電気に

不安を感じつつ30分。

そうやって病院を目指した。

 

私、起きるなよ!

まだ道程は半分なんだ、

仮定現実に怯えつつ、

私に言い聞かす。

 

そうだから走馬灯は止めてよ。

頭の中で右往左往だ!

頭内弁護士さん

ちょっと控訴とかして、

止めてくれないかなぁ?

 

動力、体が変。

くたびれているのに

動け動けと急かされる。

手も足も体も頭も

感覚が無いのにさ。

 

だけれど動く。

病院にたどり着けたから

青色の月の光を浴びつつ、

自分に会う。

 

まずは耳元で起こす?

幽体離脱なんだ、

なんかちょっと、教えたい。

やっぱ覚えていたいんだ。

1日半も離れていた事を、

元にもどってもそのまま。

 

さて、準備はいい?

ちょっと今から些細な話を

伝えてあげようじゃないか。

 

ここからが大切な巻き返し。

というより、

元に戻るんだからさ。