※仮想現実
私の現実は、
仮想でした。
09:00
ぴぴぴぴ、という
目覚まし時計の音で
目を覚ます。
眠気まなこで起き上がって、
今日は何曜日かな？
と考えながら
最初はカーテン、
次は窓を開ける。
空気を部屋に送り込んだ後は
顔を洗ってしゃっきりと。
その後玄関に寄って
新聞を取って、
部屋着に着替えて
ソファでしばし休憩――
09:34
っとと、10分寝ていた！
朝ごはんを手早く作って
いただきます。
チンしたてのトーストに
ちょっと固めの
いりたまごとハム。
ベーコンが無かったから
買いに行かないと。
10:08
夜中に洗っておいた
洗濯物を干そうかな。
本日の天気は快晴なり。
青い空が気持ち良い。
あの人は元気かな？
10:25
さてとお次はお掃除だ。
一週間の間に溜まった埃を
徹底的に除去！
水拭き、乾拭きもしておこう。
積もりに積もった
白い封筒はどう片付けよう？
ちょっと迷う。
11:03
雑巾を綺麗に洗い終えれば
お掃除は終了。
ソファに座って新聞つかんで
番組表を見るけれど、
めぼしいものは全く無し。
新聞を折り畳んで折り畳んで
見えないように置いておく。
どうしようかな、
何をしよう――？
12:11
あれ、また寝ていた？
働きすぎかなと独り言。
お昼ご飯を作りましょうか。
炊きたてご飯と
昨日の晩ごはんの残りです。
実は肉じゃがも二日目が
一番美味しいのかも。
12:52
お皿荒いで冷えた手を
暖めながら、
コーヒーを淹れる。
さて本でも読もうかな。
確か読んでいないものが
たくさんたくさん。
読んでくれって叫んでる。
本の世界に没頭するのは
やっぱり楽しい。
14:00
いきなりの大きな警報音。
思わず体がびくっと震える。
よくよく聞いたら
警報音でなくて
アナウンスの前の音。
酷いなぁと呟いてから
時間を確認、きっかり2時。
よく本を読んだなぁと
背伸びをしてから
眠気に気付いて横になる。
ゆっくり眠って
体を休めないと、ね。
でもどうしてアナウンスが
流れていたのかな。
私にはどうでもいい事。
15:29
ふと目を覚まして時間確認。
針がちょっと動いて
30分になった。
うん、洗濯物を取り込もう。
風に揺られて笑ってる
一人分の洗濯物を。
16:07
洗濯物を畳んだら
お買い物へ行かないと。
部屋着から普段着に変えて
我が家であるマンションから
一番最寄りのスーパーへ。
今日も大盛況の大にぎわい。
何が一番安いかな？
何が今は旬なのかな？
あっベーコンを
忘れちゃいけないや。
16:41
膨らんだエコバッグを
揺らしながら
家へゆっくり帰っていく。
通りの豆腐屋さんの
おばあさんと喋っていたら、
いつの間にか人が増えて
世間話に発展。
政治家の名前と政策は
何だったっけ？
今一番のニュースは
何だったっけ？
予習が足りないなぁ…。
少しも覚えちゃないなぁ…。
17:01
ついつい話し込んで
疲れちゃった。
立ちっぱなしは
どんな時でもやっぱり大変。
ふと嗅いだ花の香りも
やっぱり苦しくて大変。
ポストに入った白い封筒は
もっともっと大変。
眉間を寄せつつも
買ってきたものを
冷蔵庫に入れて、
またソファに倒れこむ。
睡魔を誘いながら
ちょっと考え事。
結局お掃除の時に
白い封筒はどうするか
決めれなかった。
積もりに積もって
大変かつ目障り。
本当にどうするべきかな…？
あの人に聞きたいけれど
出張中じゃねぇ…。
19:27
ふと目を覚まして時計確認。
うん、良い感じの時間です。
さってと夜ご飯を作ろうか。
白菜と人参と豚バラ肉の
蒸し焼きをいただきます。
やっぱり今の時期には
これが一番美味しいな。
20:21
さて、と。
早めにお風呂に
入っておこう。
温かいお風呂は
やっぱり気持ち良い。
寝そうなのはこらえないと。
頭を洗って体を洗って、
体を拭いて頭を乾かしてっと…
21:14
髪をゆっくりとかして
美容のためにと化粧水。
お風呂の後だと
とても染み渡って
得した気分？
あの人にどうか
聞いてみたい。
21:30
一日の最後に日記を書こう。
何を思おう？
何を残そう？
何を書こう？
前のページを捲って
色々考えて、
それから、
それから、
それから、
それから、
また、考えて。
そして、書き綴る。
私は書き綴る。
同じ言葉を、
毎日すらすらと、
気持ちを忘れないように。
そうして同時に
自分を褒め称える。
また今日も頑張ったね、って。
私の現実は、
全て仮想にしなければ
いけませんでした。
さも何事もないような
仮想を打ち立てなければ
いけませんでした。
日記に毎日書く言葉は
「あの人に会いたい」
ただそれだけでした。
白い封筒は、
それが不可能ですよと
伝えるようなものでした。