※夕やけ電気

 

 

「おやすみなさい」

 

川の字になって眠る。

隣にはさっきまで絵本に

目を輝かせていた私の子。

その少し後には私の細君。

二人ともゆっくり眠っている。

 

蛍光灯は小さなところだけ

ぽつんとついていて

部屋はまるで夕焼けみたいに

染まっていた。

私の子はこれを付けないと

暗いのが怖いと泣くからね。

 

私も昔そうだったよ。

暗いのは勿論だけれど

安心して眠った後に

いつの間にか消されるのも

とても怖かった。

だけれどそれは

ちゃんと眠れるようにと

願う両親の気持ちなんだ。

 

だからこそ、だからこそ、

私も消さないといけないんだ。

君がゆっくり眠れるようにと。

 

けれど今はもう少しだけ

付けていたいんだ。

君と細君の顔を、

優しく朗らかなその寝顔を

眺めていたいから。

 

君の髪をゆっくりと撫でて、

細君を少し抱き寄せて、

二人の寝息をゆっくりと

確かに聞きながら、

二人の姿をじっくりと

目に焼き付けるようにして。

 

もう二度と会えないし

二度と触れれない。

だからこそ、今は、

ずっとずっと側にいたい。

二人の姿を眺めながら。

 

 

夕焼けに染まる部屋の中で

私だけ浮いていたから。

 

 

あぁ君達が眠る前に

もう一回だけ伝えたかった。

あぁ朝がくる前に、

もう一回言えばよかったよ。

 

最上級の愛の言葉を。