※柿
下校中、柿の実が
道に落ちて潰れていた。
あわてて自転車を
動かし避けると、
赤信号で信号待ち。
息を整え待っていると
柿の実は踏んじゃあいけないよ。
ふと、誰かの声を思い出した。
確か、そうだ。
これは伯父の声だ。
私の伯父は
立派な柿の木を育てていた。
愛情をたっぷりと
吸い上げた柿の木は
それは濃厚な甘味を出す
美味しい実を産み出していた。
だからこそ柿の実を
踏んではいけないと
言っていたのだろう。
しかし、
私の伯父の供養を担当した
あのお坊さん。
家に訪ねに来たときに
落ちた柿を踏んでいたが、
果たして
大丈夫だったのだろうか?
なんとなく気になって
母に聞いてみると、
葬儀の次の日、
お弁当に入っていた
牡蠣フライに
ただ一人当たって
寝込んだそうだと聞いた。